顔面神経麻痺の筋電図一桁|重症でも諦めない専門治療

筋電図検査で「一桁」でも諦めないでください。重症の顔面神経麻痺でも開ける道(治療法)を詳しくご紹介します。

顔面神経麻痺を発症し、病院での筋電図検査(ENoG)で「10%以下」あるいは「一桁」の数値であると診断され、大変な不安を抱えている方へ。

医師から「重症である」「後遺症が残る可能性が高い」と言われ、大きなショックを受けていることと思います。しかし、顔面神経麻痺 重症 諦めないでください。

現代の医療では、症状の改善を目指すための専門治療の選択肢が数多く存在します。

bFGFを用いた最新の減荷手術や、直接神経に作用させるステロイド鼓室内注入療法、後遺症を最小限に抑え込むための専門的なリハビリテーションや鍼治療、そしてボトックス療法や形成外科による再建手術などがあります。

この記事では、それぞれの治療法について分かりやすく解説するとともに、専門的な視点からも深く掘り下げていきます。

「ENoG 10%以下」とはどういう状態か?

誘発筋電図検査(ENoG)が10%以下は「完全脱神経型」を表します。

神経断裂が起きている「完全脱神経型」

顔面神経麻痺の重症度を詳しく調べるために、発症から7〜14日目に誘発筋電図検査(ENoG)という検査を行います。

この結果が顔面神経麻痺 ENoG 10%以下の状態だった場合、顔を動かす神経の線維の多くが切れてしまっている「完全脱神経型」と呼ばれる非常に重症な分類に入ります。

顔面神経麻痺 筋電図 一桁という状態では、神経が大きなダメージを受けているため、自然に元通りに回復することは難しくなります。

治癒までに半年以上かかり、後遺症が高率で起こる

ENoGの数値が10%以下の場合、顔の動きが少しずつ戻り始めるまでに3〜4ヶ月、回復が完了するまでに半年から1年以上という長い時間がかかります。

また、回復する過程で、切れた神経が本来とは違う筋肉に間違ってつながってしまう「迷入再生」という現象が起こりやすくなります。

これにより、口を動かすと目が閉じてしまう「病的共同運動」や、顔が常にこわばる「顔面拘縮」といった後遺症が高い確率で現れることが特徴です。

もっと詳しく:ENoG 10%以下の症状を医学的に解説

顔面神経麻痺の機能予後診断において、最も信頼性の高い電気生理学的検査が誘発筋電図検査(ENoG)です。発症後10〜14日目のENoG値が10%未満となる症例は、Sunderland分類における第3度以上の神経損傷、すなわち軸索と神経内膜が断裂する「神経断裂(neurotmesis)」を広範に起こしている完全脱神経型と診断されます。

この病態ではWaller変性(ワーラー変性)が進行し、神経の再生過程において再生軸索が本来とは異なる誤った表情筋の運動終板に到達する「迷入再生」が生じます。

その結果、発症から3〜4ヶ月の回復期以降に、病的共同運動や顔面拘縮といった機能異常(malfunction)がほぼ必発する非治癒群となります。ENoGが0%の場合は完全脱神経を意味し、自然回復の可能性は極めて低くなります。

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【急性期の専門治療】重症例に対する強力なアプローチ

急性期における重症例に行われれる専門的治療例の図

入院による「ステロイド大量療法+抗ウイルス薬」

顔面神経麻痺 重症と診断された場合、できるだけ早く強力な治療を開始することが何よりも大切です。

完全な麻痺を起こしている重症例に対しては、入院をして通常よりも非常に多くのステロイド剤を使う「ステロイド大量療法」が行われます。

同時に、原因となっているウイルスの増殖を抑えるための抗ウイルス薬も点滴や内服で投与し、神経の腫れとダメージを最小限に食い止めます。

直接神経に届ける「ステロイド鼓室内注入療法」

全身への点滴や内服治療に加えて、耳の鼓膜の奥にある「中耳(鼓室)」という空間に、直接ステロイド剤(デキサメタゾンなど)を注入する新しい治療法もあります。

この「ステロイド鼓室内注入療法」は、ダメージを受けている顔面神経のすぐ近くに直接お薬を作用させることができるため、重症な患者さんの治癒率をさらに高める上乗せ効果が報告されています。

ガイドラインでも弱く推奨されている治療法です。

もっと詳しく:重症例治療を医学的に解説

顔面神経麻痺の急性期治療の主体は、抗ウイルス薬と副腎皮質ステロイドの投与です。

ENoG 10%以下が予測される柳原法10点以下の重症例に対しては、顔面神経管内の高度な浮腫と虚血による悪循環を早期に断ち切るため、入院下でのステロイド大量療法(プレドニゾロン120〜200mg/日など)と抗ウイルス薬の併用療法が弱く推奨されています。

さらに、全身投与の上乗せ効果を狙うアプローチとして、ステロイド鼓室内注入療法が存在します。これは、鼓膜を穿刺してデキサメタゾンなどのステロイドを鼓室内に注入し、近接する顔面神経へ局所的に高濃度の薬剤を直接到達させる治療法です。これらの強力な薬物療法により、高度麻痺症例の治癒率向上が図られます。

『顔面神経麻痺の診断と治療-初期対応から後遺症治療まで- (PEPARS No.214)』(出版社:全日本病院出版会)

【手術療法】諦めない!顔面神経減荷術と最新の「bFGF」

手術療法の例を図解

神経の絞扼を解く「顔面神経減荷術」

顔面神経は、耳の奥にある大変狭い骨のトンネルを通っています。

麻痺によって神経がひどく腫れ上がると、このトンネルの中で神経が自らを締め付けて首を絞めているような状態(絞扼)になり、ダメージが悪化します。

これを防ぐために、骨を削って神経の圧迫を開放する「顔面神経減荷術」という手術があります。発症から2週間以内の早期に行うことが理想とされています。

最新治療:時期を過ぎても神経再生を促す「bFGFを用いた減荷術」

通常の減荷手術は、発症から1ヶ月以上経過した時期に行うと効果が薄いとされてきました。

しかし近年、再生医療の応用として「bFGF」という神経の成長を促すお薬を用いた新しい減荷手術が行われています。

ゼリー状にしたお薬を神経の周りに留置することで、発症から時間が経ってしまった重度の麻痺であっても神経の再生が直接促され、従来よりも顔の動きが改善しやすくなっています。

もっと詳しく:最新の治療を医学的に解説

側頭骨内の骨性顔面神経管で生じた高度な神経浮腫と虚血による絞扼障害を解除するため、経乳突法や経中頭蓋窩法による顔面神経減荷術が適応となります。

従来、減荷術はWaller変性が完成する前の発症後2週間以内が至適時期とされ、それ以降の晩期手術は効果が限定的でした。しかし近年、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を含浸させたゼラチンハイドロゲルを顔面神経周囲に留置する新しい減荷手術が開発されました。

bFGFの徐放化により神経の再生が直接的に促進されるため、発症から時間が経過した晩期の高度麻痺症例であっても、有意な麻痺改善や予後向上をもたらすことが実証されつつあり、再生医療を応用した画期的な外科的アプローチとなっています。

『顔面神経麻痺の診断と治療-初期対応から後遺症治療まで- (PEPARS No.214)』(出版社:全日本病院出版会)

【回復期のリハビリ・鍼治療】後遺症を最小限に抑えるために

回復期のNG行動と推奨されるリハビリ・鍼治療について

百面相はNG!「バイオフィードバック療法」と「伸張マッサージ」

顔面神経麻痺 筋電図 一桁の重症例では、無理に顔を強く動かす「百面相」のような運動や、低周波の電気刺激は絶対に行ってはいけません。

切れた神経が間違った筋肉につながるのを強力に促してしまい、後遺症が悪化します。回復期には、鏡を使って不要な動きを抑える「ミラーバイオフィードバック療法」や、縮んだ筋肉を優しく伸ばす「伸張マッサージ」を徹底し、こわばりを防ぐことが大切です。

難治性麻痺にも完全治癒の報告がある「鍼治療」の可能性

専門的なリハビリに加えて、鍼治療も後遺症を抑えるための選択肢となります。最新の『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』においても、顔面神経麻痺に対する鍼治療は推奨されています。

実際に国内の研究では、筋電図検査で神経の反応が全くない最も治りにくいとされる患者さんに対して鍼治療を行ったところ、一部の方で完全に治癒したという、希望の持てる報告も存在します。

もっと詳しく:リハビリと鍼灸治療の効果を医学的に解説

完全脱神経型の重症例では、神経断裂線維の迷入再生による機能異常をいかに防ぐかが回復期リハビリテーションの鍵となります。

粗大で強力な随意運動や低周波神経筋電気刺激は、迷入再生を強力に促通し、病的共同運動や顔面拘縮を増悪させるため絶対禁忌とされています。代わりに、過運動症による表情筋の短縮を防ぐ「筋伸張マッサージ」と、鏡を用いて不要な筋収縮を抑えながら分離運動を促す「ミラーバイオフィードバック療法」を徹底します。

また、鍼治療は最新のガイドラインで弱く推奨されており、「ENoG 0%かつNETスケールアウト」という最重症例29例に対し鍼治療を行い、5例(17.2%)が完全治癒したという報告もあります。エビデンスレベルは低いながらも新たな治療の可能性を示唆しています。

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【慢性期・後遺症期】一生付き合うとは限らない専門治療

慢性期・後遺症期における治療の選択肢例

ボツリヌス毒素療法(ボトックス)とリハビリの併用

発症から時間が経ち、顔のこわばりや意図せず顔が動いてしまう病的共同運動が残ってしまった場合でも、治療の選択肢はあります。

異常に力が入っている筋肉に「ボトックス」を注射し、筋肉をリラックスさせる治療です。注射が効いている数ヶ月の間に、正しい顔の動かし方を身につけるリハビリを並行して行うことで、後遺症そのものを徐々に軽くしていくことが期待できます。

形成外科による「静的・動的再建術」

麻痺がどうしても回復しなかった場合でも、形成外科の高度な手術で顔のバランスや動きを取り戻すことができます。

眉毛や瞼の垂れ下がりを改善する「静的再建術」や、体の他の部分から神経や筋肉を移植して「笑い」の表情を作る「動的再建術」などがあります。

また、意図しない顔の動きの原因となっている神経を選択的に切り取る手術も行われています。

もっと詳しく:西洋医学的な後遺症の専門治療

慢性期に固定化した病的共同運動や顔面拘縮に対しては、A型ボツリヌス毒素の局所注射療法が有効です。

異常収縮している主動筋や拮抗筋を一時的に弛緩させ、その間にバイオフィードバック療法などのリハビリテーションを反復することで、中枢神経の可塑性を促し、機能異常を軽減させます。

一方、不可逆的な完全麻痺や高度の非対称性に対しては形成外科的再建術が適応となります。眉毛挙上術や眼瞼への軟骨移植などの静的再建術に加え、遊離筋肉移植術や顔面神経交差移植、舌下神経・咬筋神経を用いた神経移行術などの動的再建術により、随意的な表情表出の獲得を目指します。

さらに、病的共同運動に対して選択的顔面神経切断術を行い、原因となる迷入再生回路を遮断するアプローチも実施されています。

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まとめ

顔面神経麻痺の筋電図検査で「ENoG 10%以下」あるいは「一桁」と診断された場合、神経断裂を伴う完全脱神経型という非常に重症な状態であり、強い不安を感じるかもしれません。

しかし、これまで解説してきたように、決して諦める必要はありません。

重症例であっても回復を目指すための治療として、急性期のステロイド大量療法やステロイド鼓室内注入療法から始まり、最新のbFGFを用いた減荷手術、専門的なリハビリテーション、ボトックス治療、そして形成外科による再建手術まで、医学の進歩により数多くの専門治療の選択肢が用意されています。

決して一人で悩みを抱え込まず、まずは専門医にしっかりと相談し、ご自身の状態に合わせた最適な治療方針を立ててもらうことが大切です。

顔面神経麻痺の鍼灸外来として、当院では患者様一人ひとりの症状に合わせた専門的な鍼治療を提供しております。

病院での専門的な西洋医学の治療と並行して、難治性の麻痺の改善や後遺症の軽減をサポートするお手伝いをしております。

顔面神経麻痺の後遺症や長引く症状でお悩みの方は、決して諦めず、ぜひ一度当院の鍼灸外来へご相談ください。このセッションであなたの笑顔を取り戻すためのサポートを全力で行います。

顔面神経麻痺の鍼灸外来

一般的な鍼灸院では行わない「耳の検査」で、回復の兆しを探ります。

アブミ骨筋反射を測定する様子

「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」「後遺症が心配」
私たちはそうした不安を抱える患者さんと日々向き合っています。

当院が他の鍼灸院と決定的に違うのは、「アブミ骨筋反射」を確認すること。
顔面神経は、実は耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にも繋がっています。音が鳴った時にこの筋肉が反応するかを見ることで、神経が反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。

この検査には医療機関レベルの専門機器が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。
当院では、見た目や感覚だけに頼らず、こうした「客観的なデータ」をもとに治療方針を立てます。「もう治らない」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。

参考文献

当院が提示するデータや治療メカニズムは、以下の専門書や研究に基づき、独自の実績と比較・検証したものです。

  • 『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』(編:日本顔面神経学会 / 出版社:金原出版)
  • 『顔面神経麻痺診療の手引―Bell 麻痺と Hunt 症候群―2011年版』(編:日本顔面神経研究会 / 出版社:金原出版)
  • 『顔面神経麻痺の診断と治療-初期対応から後遺症治療まで- (PEPARS No.214)』(出版社:全日本病院出版会)
  • 『顔面神経麻痺を治す (Monthly Book ENTONI No.282)』(出版社:全日本病院出版会)
  • 『顔面神経麻痺治療のコツ (PEPARS No.143)』(出版社:全日本病院出版会)
  • 『顔面神経麻痺の治療update (PEPARS No.92)』(出版社:全日本病院出版会)
  • 『顔面神経麻痺が起きたらすぐに読む本 改訂新版』(著:栢森良二 / 出版社:PHPエディターズ・グループ)
  • 『動画DVD付 顔面神経麻痺のリハビリテーション 第2版』(著:栢森良二 / 出版社:医歯薬出版)
  • 『これからはじめよう! 顔面神経麻痺リハビリテーション』(編:飴矢美里・羽藤直人 / 出版社:インテルナ出版)