顔面神経麻痺|手術後遺症・術後症状の鍼治療

顔面神経麻痺のでやってはいけないこと

脳腫瘍や耳下腺腫瘍などの手術後に顔面神経麻痺が残ってしまった方、あるいは顔面神経減荷術や神経再建術を受けたものの、顔の強い「こわばり」や「病的共同運動」といった手術後遺症に悩まされている方は少なくありません。「もう治らないのではないか」と諦めかけている方に向け、本記事では手術に伴う顔面神経麻痺のリスクや後遺症が起こるメカニズムを客観的に解説します。その上で、最新の『顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版』でもその有効性が認められ、推奨されている「鍼治療」が、顔の手術後遺症であるこわばりやつっぱり感をどのように和らげ、QOL(生活の質)を向上させるのかを最新のデータに基づいて詳しくご紹介いたします。

なぜ起こる?手術による顔面神経麻痺(副損傷)とリスク

手術で起こり得る副損とリスクをイラストでご紹介

手術によって顔面神経麻痺が生じる原因や、治療目的で行われる手術に伴う合併症のリスクについて解説します。

聴神経腫瘍・耳下腺腫瘍・中耳手術に伴う顔面神経の損傷

聴神経腫瘍などの小脳橋角部腫瘍手術、耳下腺腫瘍手術、中耳手術、頭蓋底手術などの際に、顔面神経が圧排・牽引・切断されることで術後性の顔面神経麻痺が生じることがあります。これらの手術では、腫瘍の摘出や病変の処置に伴い、顔面神経が引き延ばされたり圧迫を受けたりするため、副損傷として手術後に顔の動きが失われるリスクが常に存在しているのです。

顔面神経減荷術に伴う難聴や髄液漏などの合併症リスク

顔面神経麻痺の治療として行われる「顔面神経減荷術」は有効な手段となり得ますが、手術侵襲が大きく、術後に感音難聴や伝音難聴、耳鳴り、さらには髄液漏といった合併症(リスク)を引き起こす可能性があることが報告されています。麻痺を改善するための手術であっても、身体への負担が大きく、一定の不利益のリスクを伴う点を客観的に理解することが大切です。

もっと詳しく:手術侵襲による末梢性顔面神経麻痺の発生機序と減荷術における医原性合併症

聴神経腫瘍などの小脳橋角部腫瘍手術、耳下腺腫瘍手術、中耳手術、頭蓋底手術においては、顔面神経が病変に圧排・牽引・切断されることで術後性顔面神経麻痺が生じることがあります。また、高度麻痺に対する「顔面神経減荷術」は有効な手段となり得ますが、手術侵襲が大きく、術後に感音難聴や伝音難聴、耳鳴、さらには髄液漏といった重大な合併症(リスク)を引き起こす可能性があることが報告されています。

手術後の顔に現れる重い後遺症のメカニズム

手術後、迷入再生(神経の混線)によって生じる「病的共同運動」と「顔面拘縮」の図解

手術後に生じる、顔の引きつれや思い通りに動かないといった重い後遺症のメカニズムについて解説します。

神経縫合・再建術後にも起こる「迷入再生(神経の混線)」

手術で神経が切断され、顔面神経吻合術や神経移植術、舌下神経-顔面神経吻合術などの動的再建術を行った後でも、再生する神経が本来とは異なる筋肉に繋がってしまう「迷入再生(神経過誤支配)」が生じやすいという特徴があります。神経がつながり動きが出始めた後に、この神経の混線が新たな問題を引き起こす原因となります。

「顔面拘縮(こわばり)」と「病的共同運動」が生じる理由

迷入再生や神経核の興奮性亢進により、麻痺が回復する過程(あるいは再建術で動きが出始めた後)で、「口を動かすと意図せず目が閉じてしまう(病的共同運動)」や、安静時でも顔が強く引きつる「顔面拘縮(こわばり)」といった重い後遺症が高確率で発生します。これらはお顔の動きだけでなく、不快な引きつれ感として慢性期に患者様を悩ませます。

もっと詳しく:神経再建術後の過誤支配に伴う異常連合運動と顔面拘縮の病態生理

顔面神経吻合術や神経移植術、舌下神経-顔面神経吻合術などの動的再建術を行った後でも、再生する神経が本来とは異なる筋肉に繋がってしまう「迷入再生(神経過誤支配)」が生じやすい傾向があります。この迷入再生や神経核の興奮性亢進により、麻痺が回復する過程で「口を動かすと意図せず目が閉じてしまう(病的共同運動)」や、安静時でも顔が強く引きつる「顔面拘縮(こわばり)」といった重い後遺症が高確率で発生します。

【慢性期の希望】ガイドラインで推奨される「鍼治療」の有効性

顔面神経麻痺診療ガイドラインで「鍼治療を行うことを弱く推奨する」ことをイラストで表現

治れないお顔のこわばりに対し、ガイドラインでも認められた鍼治療の有効性について解説します。

『診療ガイドライン2023年版』で後遺症への鍼治療が推奨に

最新の『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』において、「後遺症が出現した慢性期の顔面神経麻痺患者に対し、鍼治療を行うことを弱く推奨する」と明記されており、治療の有効な選択肢として認められています。これまで曖昧にされがちだった鍼灸の効果が、現代医学のガイドラインで正式に推奨されたことは、患者様にとって大きな希望です。

RCT(比較試験)が示す「こわばり感・つっぱり感」の緩和効果

韓国やトルコで行われた質の高いランダム化比較試験(RCT)において、後遺症のある患者に対する鍼治療が、麻痺の後遺症である「こわばり感」や「つっぱり感」などの緩和に期待できることが示唆されています。客観的な比較試験によって科学的根拠が示されたことで、手術後のこわばりに対する鍼治療の信頼性はさらに高まっています。

もっと詳しく:診療ガイドラインにおけるエビデンス構築とランダム化比較試験に基づく臨床評価

最新の『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』において、「後遺症が出現した慢性期の顔面神経麻痺患者に対し、鍼治療を行うことを弱く推奨する」と明記されています。韓国やトルコで行われた質の高いランダム化比較試験(RCT)において、後遺症のある患者に対する鍼治療が、麻痺の後遺症である「こわばり感」や「つっぱり感」などの緩和に期待できることが示唆されています。

鍼治療が手術後のQOL(生活の質)を向上させる理由

鍼治療を行うことで痛みや感覚障害が改善され、ストレスを軽減できている様子のイラスト化

お顔の動きの完全な回復が難しくても、鍼治療が生活の質をどのように高めるのかを解説します。

顔の感覚障害(鈍重感・疲労感・痛み)の改善

手術後などの慢性期において、顔の随意運動(動き)自体の完全な回復が難しくても、顔面の「こわばり感」「鈍重感(重だるさ)」「疲労感」「痛み」といった感覚症状が鍼治療によって軽減されることで、患者のQOL(生活の質)が大きく向上することが報告されています。不快な感覚が減ることで、日常のストレスが大幅に軽減されます。

首・肩こりなどの全身的な不定愁訴へのアプローチ

顔面神経麻痺では、お顔の表情筋だけでなく、後遺症に伴って生じやすい首や肩のこり感、頭痛などの不定愁訴に対しても、手足の末梢部のツボなどを用いた全身的なアプローチが行われます。お顔のバランスの崩れから生じる全身の緊張を鍼治療で緩めることで、身体全体がリラックスし、お顔の血流改善にも好循環をもたらします。

もっと詳しく:慢性期顔面感覚障害の軽減によるQOLの変容と末梢経穴を介した全身的アプローチ

手術後などの慢性期において、顔の随意運動自体の完全な回復が難しくても、顔面の「こわばり感」「鈍重感」「疲労感」「痛み」といった感覚症状が鍼治療によって軽減されることで、患者のQOL(生活の質)が大きく向上することが報告されています。鍼治療では表情筋だけでなく、後遺症に伴って生じやすい首や肩のこり感、頭痛などの不定愁訴に対しても、手足の末梢部のツボなどを用いた全身的なアプローチが行われます。

鍼治療後のマッサージ(セルフケア)が生む相乗効果

鍼治療直後のマッサージの有効性とNG行動をイラストで紹介

鍼治療の効果をより長持ちさせるために、ご自宅で行う正しいセルフケアとの相乗効果について解説します。

施術直後のリラックス状態で行う表情筋ケア

鍼治療の直後は表情筋の拘縮(こわばり)が軽減し、顔が軽くリラックスした状態になります。この筋肉が柔らかくなっている絶好のタイミングで、揉捏法や伸張マッサージなどのセルフケアを行うことで、固まった表情筋を効率よくほぐすことができ、後遺症の軽減がさらに期待できるようになります。

揉捏法や伸張マッサージの正しい取り入れ方

ご自宅で行うセルフケアとしては、筋肉を優しくほぐす揉捏法(じゅうねつほう)や、縮んだ筋肉を心地よく伸ばす伸張マッサージを正しく取り入れることが大切です。注意点として、無理にお顔を大きく動かそうとしたり、強い力でマッサージを行ったりすることは、かえって病的共同運動を悪化させるリスクがあるため、専門の指導に基づいた優しいケアを習慣化しましょう。

もっと詳しく:表情筋拘縮に対する揉捏法・伸張ストレッチの介入タイミングと相乗効果の機序

鍼治療の直後は表情筋の拘縮(こわばり)が軽減し、顔が軽くリラックスした状態になるため、そのタイミングで揉捏法や伸張マッサージなどのセルフケアを行うことで、後遺症の軽減がさらに期待できます。鍼治療では、後遺症に伴って生じやすい首や肩のこり感、頭痛などの不定愁訴に対しても全身的なアプローチが行われ、セルフケアとの相乗効果を高めます。

まとめ:手術後のこわばりは諦めない!専門医や鍼灸師と連携したケアを

脳腫瘍や耳下腺腫瘍などの手術後に生じた顔面神経麻痺や、手術後の「こわばり」「引きつれ」は非常に辛いお悩みです。しかし、最新の『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』でも示されている通り、慢性期の後遺症に対して鍼治療は有効な選択肢として認められています。

お顔の動きの完全な回復が難しい場合でも、鍼治療によって「こわばり感」や「鈍重感」「疲労感」といった感覚障害を軽減し、QOL(生活の質)を大きく向上させることが可能です。専門医による客観的な診断と連携しながら、リハビリや正しいセルフケアの指導ができる鍼灸師とともに、諦めずにお顔のケアを続けていきましょう。

当院では、お一人で悩みを抱えている方のために無料相談の窓口を設けております。どうぞお気軽にご相談ください。

顔面神経麻痺の鍼灸外来

一般的な鍼灸院では行わない「耳の検査」で、回復の兆しを探ります。

アブミ骨筋反射を測定する様子

「病院での治療は終わったけれど、顔の動きが戻らない」「後遺症が心配」
私たちはそうした不安を抱える患者さんと日々向き合っています。

当院が他の鍼灸院と決定的に違うのは、「アブミ骨筋反射」を確認すること。
顔面神経は、実は耳の奥にある小さな筋肉(アブミ骨筋)にも繋がっています。音が鳴った時にこの筋肉が反応するかを見ることで、神経が反応できる状態かを知る重要な手がかりになります。

この検査には医療機関レベルの専門機器が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。
当院では、見た目や感覚だけに頼らず、こうした「客観的なデータ」をもとに治療方針を立てます。「もう治らない」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。


参考文献

  • 1位:『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』 (編:日本顔面神経学会 / 出版社:金原出版)
    ※慢性期(後遺症期)における鍼治療の推奨度、こわばり軽減によるQOL向上、および顔面神経減荷術の合併症リスクの根拠として最も多く参照。
  • 2位:雑誌『耳喉頭頸』第96巻第3号 特集「顔面神経麻痺―治癒への10の鍵」 (出版社:医学書院)
    ※「末梢性顔面神経麻痺への鍼治療の実際と有効性(粕谷大智 著)」より、後遺症に対する鍼治療のRCTデータ、つっぱり感の緩和、セルフケアとの併用効果について参照。
  • 3位:『顔面神経障害 (CLIENT 21 第9巻)』 (編:青柳優 / 出版社:中山書店)
    ※聴神経腫瘍や耳下腺腫瘍、中耳手術による顔面神経の副損傷(術後麻痺)の発生リスク、および病的共同運動や顔面拘縮のメカニズムについて参照。
  • 4位:『動画DVD付 顔面神経麻痺のリハビリテーション 第2版』 (著:栢森良二 / 出版社:医歯薬出版)
    ※神経再建術後や重症麻痺後に生じる迷入再生、および顔面拘縮(こわばり)の病態生理について参照。