ホスト: こんにちは。今回のテーマはですね、多くのリスナーの方から関心が寄せられている突発性難聴です。特に病院でのステロイド治療、まあいわゆる標準的な治療で十分な効果が得られなかったという、かなり厳しい状況に焦点を当てていきます。そんな時、他に一体どんな選択肢があるのか、皆さんが共有してくださった資料をもとに、深く掘り下げていきたいと思います。手元にあるのが主に2つの資料でして、 一つは、長野県にある森上鍼灸整骨院。ここは、この分野を専門に扱っている治療院のデータですね。この記事は、副院長の吉池美奈子さんが書かれたものです。そしてもう一つが、全く違うアプローチを取る京都大学の研究チームによる最先端の臨床試験の報告です。今回の探求の目的は、ステロイド治療が効かなかった重度の難聴に対して、この二つのアプローチがどんな可能性を示しているのか、その本質を理解することです。 では、早速見ていきましょうか。
ゲスト: まず、今日の話の前提として、重度の突発性難聴がどのくらい深刻な状況なのか、ちょっと整理しておきましょう。聴力のレベルにはいろいろありますが、資料によると90dB以上、つまりすぐ耳元で地下鉄が通ったり、犬が鳴いたりする大きな音がしても聞こえないというレベルが重度とされています。検査結果の紙では、測定不能を意味するスケールアウトと表記されることもありますね。
ホスト: スケールアウトですか?つまり、もう聴力検査の機械では測れないほど聞こえないと。いや、それは想像以上に深刻ですね。
ゲスト: その通りなんです。突発性難聴って、よく1/3が治癒、1/3が改善、1/3が不変なんて言われますけど、あれはあくまで全体の平均値でして、重度の、特にこのスケールアウトの状態になると話は全く別です。ある大学病院のデータでは完治率がわずか6.3%という報告もあるほど、非常に厳しいのが現実なんです。
ホスト: それってほとんど治らないと言っているようなものじゃないですか。標準治療はステロイドが中心と聞きますけど、それで効果がなかった方々っていうのは、本当に八方塞がりな気持ちでしょうね。
ゲスト: まさにそうした方々が今日の話の主役になります。
ホスト: そのある意味絶望的な状況の中で、希望の光になるかもしれないのが、一つ目の資料、森上鍼灸整骨院のアプローチなんですね。ただ、正直に言うとですね、鍼治療と聞くと、肩こりとか腰痛のイメージがすごく強いんです。それで聴力が回復するっていうのは、ちょっとにわかには信じがたいんですが、どういう理屈なんでしょうか。
ゲスト: いい質問ですね。多くの方がそう思われると思います。そしてまさにそこが彼らのアプローチの核心部分なんです。彼らは突発性難聴を耳だけの病気とは見ていないんですね。その根本原因は梗塞体質にあると考えているんです。
ホスト: 梗塞体質、あの脳梗塞とか、心筋梗塞のあの梗塞ですか?
ゲスト: そうです。全身の血流が悪くて血管が詰まりやすい体質そのものが問題なのだと。じゃあなぜ耳なのかというと、内耳の蝸牛という部分の血管はものすごく細いんですね。 体の中でも特に血流障害の影響を受けやすい場所なんです。だからこそ、全身の詰まりやすさが最初に耳の症状として現れることがあるという考え方です。
ホスト: つまり、耳は体質のアラームが鳴る場所の一つに過ぎないというわけですね。
ゲスト: そういうことです。ですから、彼らの治療は耳に鍼を打って終わりというわけでは全くありません。まず、医療用のサーモグラフィーで全身の体温分布を調べたり、循環器用のエコーで首とか手足の血流を直接観察したりと、徹底的に全身を検査するんです。資料によると、この梗塞体質の方にはふくらはぎの温度が低いといった共通の特徴が見られることが多いそうですね。そうした客観的なデータに基づいて、体質を正確に把握して、根本的な血流改善を目指す。一人一人に合わせた完全なオーダーメイドの鍼治療を行う。それがこの治療院のやり方なんです。 40年の臨床経験で、突発性難聴の患者さんだけでも延べ14万人の実績があるというのは、多分このアプローチの賜物なんでしょうね。
ホスト: 14万人!いや、その数字が専門性の高さを物語ってますね。それで肝心の実績ですけど、特に先ほど話に出た最も重いスケールアウトの患者さんはどうなんでしょうか?
ゲスト: そこが本当に驚くべき点なんです。資料によれば、その絶望的とも言えるスケールアウトの状態だった患者さんのうち、実に3割から4割の方に聴力の回復が見られたと報告されています。
ホスト: え、ちょっと待ってください。完治率が数パーセントと言われた、あの最も重い状態から、3割から4割が回復するんですか?・・・それはもし本当だとしたら革命的ですよ。
ゲスト: そう報告されているんです。さらに、治療を受けた患者さん全体で見ると。 8割から9割の方に何らかの前向きな変化が見られたとしています。
ホスト: 8割から9割。
ゲスト: 聴力回復だけじゃなくて、耳鳴り、めまい、耳の詰まり感の改善とか、そういうのも含めてですね。しかも、ここに来る患者さんのほとんどは、ステロイドの点滴とか、より強力な鼓室内注入療法といった標準治療を試してもよくならなかった方々なんです。
ホスト: いわば最後の砦として訪れる人が多いわけですね。 それでこの数字は、いや、すごいとしか言いようがないです。全身を科学的に見るという視点が、これほどの結果につながるんですね。
ゲスト: ええ、非常に根本的な体質から変えていこうというアプローチですよね。
ホスト: なるほど。全身の血流を整えるという非常に根本的なアプローチですね。一方で、全く違う、もっとこうピンポイントな方法で内耳に直接働きかける研究も進んでいるんですよね。 それがもう一つの資料、京都大学の研究です。
ゲスト: はい、こちらも非常に希望の持てる研究です。そして重要なことに、この研究の対象者も森上鍼灸整骨院のケースと同じく、ステロイドによる標準治療で効果が得られなかった患者さんたちです。
ホスト: 具体的にはどんな治療法なんですか?
ゲスト: こちらはですね、インスリン様細胞成長因子1、通称IGF-1という物質を使います。これはもともと体の中にあって、細胞の成長とか再生を促す物質なんですけどね。これを特殊なジェルに混ぜて、鼓室内に直接投与するんです。このジェルが体温で溶ける性質を持っていて、薬を内耳にゆっくりと持続的に届け続けることができるわけです。
ホスト: なるほど、ハイテクな湿布みたいなイメージでしょうか。直接、しかもじわじわ効かせると。それで結果はどうだったんですか?
ゲスト: 多くの患者さんを対象にした最終段階の臨床試験、第三相試験でおよそ7割の患者さんに聴力の改善が報告されました。
ホスト: 7割、これもまた素晴らしい成果ですね。
ゲスト: これは従来のステロイドの鼓室内注入療法よりも高い改善傾向を示したとされています。それだけじゃないんです。この治療法のもう一つの大きな利点は安全性です。ステロイドを直接注入する方法だと、約15%の確率で副作用として鼓膜に穴が開いてしまうという課題があったんですが、このIGF-1を使った治療では、そうした例は一例も報告されなかったそうです。 より効果的でかつ安全な方法である可能性が示されたということですね。
ホスト: でも、ここで素朴な疑問が湧きます。森上鍼灸整骨院はスケールアウトから3割4割が回復で、京都大学は7割が改善。これ、数字だけ見ると7割の方が優れているように聞こえてしまうんですけど、これはどう考えたらいいんでしょう?
ゲスト: そこがですね、今回の資料を読み解く上で最も重要なポイントなんです。 結論から言うと、この二つの数字を単純に並べて優劣をつけるのは全く適切ではありません。
ホスト: というと?
ゲスト: 比べている患者さんたちの重さがそもそも違う可能性が高いからです。
ホスト: ああ、なるほど。
ゲスト: 森上鍼灸整骨院の3割4割というデータは、先ほども強調したように、測定不可能レベルであるスケールアウトという最も重い状態の患者さんに限定した数字なんですね。
ホスト: いわば最難関のグループに絞ったデータだと。
ゲスト: そうです。一方で、京都大学の7割という数字は、ステロイドが無効だった患者さんという、より広いくくりでのデータです。もちろん、その中にはスケールアウトの方も含まれているでしょう。でも、全員がそうとは限らない、もう少し軽度の難聴の方も含まれている可能性があるわけです。
ホスト: 分母となる集団がそもそも違うわけですね。
ゲスト: ええ、資料に面白い登山での例え話がありました。森上さんのデータは 崖から落ちて全く動けない瀕死の人、スケールアウトのうち3割4割が自力で歩けるようになったという、まあ奇跡的な救助の話に近い。一方、京都大学のデータは、最初の救助隊、ステロイドでは助けられなかった遭難者パーティー全体のうち、新しいハイテク装備IGF-1を使ったら7割の人の状態が上向いたという話。
ホスト: どちらも素晴らしい成果だけれど、そもそも挑戦している舞台が少し違うかもしれないということですね。
ゲスト: そういうことです。
ホスト: 鍼という伝統医療とIGF-1という最先端の再生因子。全く違うように見えるこの二つが、もしかしたら水面下でつながっているかもしれないという驚くべき仮説が示されていますよね。
ゲスト: その通りです。実は、鍼灸治療がなぜ効くのか、そのメカニズムの一つとして古くから言われていることがあるんです。それは、鍼の刺激が脳下垂体に働きかけて、体内の成長ホルモンの分泌を促すというものです。
ホスト: 成長ホルモンですか。あの体の成長期に出るあのホルモンですよね。
ゲスト: はい。そして、その成長ホルモンが肝臓を刺激して作られる物質こそが、何を隠そう京都大学が耳に直接投与した、あのIGF-1なんです。
ホスト: つまり、京都大学の研究は、IGF-1を外からハイテクなジェルで直接補充するアプローチ。そして鍼灸治療は。 自らIGF-1を作り出す力を引き出すアプローチかもしれないと。
ゲスト: あくまで仮説の段階ですけどね。でも、非常に興味深く、説得力のある視点だと思います。炎症を抑えることが主目的だったステロイド治療とは、ちょっと次元が違うわけです。内耳を再生させるという共通の目的に、西洋医学と東洋医学が外からのアプローチと内側からのアプローチという全く異なる方法で迫っている可能性を示唆しているんです。しかも、森上鍼灸整骨院の実績を評価する上で、先ほど少し触れましたが、彼らの元を訪れる患者さんの中には、点滴だけじゃなくて、より強力な治療であるステロイドの鼓室内注入を試しても効果がなかったという方が含まれている点も重要です。つまり、より難治性の高いケースでも結果を出している可能性があるということなんですね。
ホスト: なるほど。では、これらの情報を踏まえて、この話を聞いているリスナーの皆さんにとって、これが一体どういう 意味を持つのか整理していただけますか?
ゲスト: はい。病院での標準治療で効果が出なかったとしても、そこで諦める必要はないということです。新しい選択肢が存在して、実際に成果を上げているんです。京都大学のIGF-1治療はまだ治験段階でして、誰もがすぐに受けられるわけではありません。でも、数年後、数十年後の突発性難聴治療に大きな光を灯すものであることは間違いないでしょう。 一方で、鍼治療は今すぐにでも受けることができる治療法です。
ホスト: ただし、そこには大きな注意点がありますよね。鍼灸ならどこでもいいというわけでは全くない。
ゲスト: まさにおっしゃる通りです。鍼灸というのは、施術者によって技術レベルや知識、そして診断能力にもう天と地ほどの差があります。ただ、マニュアル通りに耳の周りのツボに鍼を打つだけでは、今日お話ししたような成果はまず期待できません。
ホスト: 今日の話を聞いてよくわかりましたけど、森上鍼灸整骨院のアプローチは非常に科学的で、全身を見ていましたもんね。
ゲスト: そこがすべてです。今回の資料で紹介されている森上鍼灸整骨院のように、サーモグラフィーやエコーといった客観的な検査機器を用いて、全身の状態を科学的に診断し、豊富な臨床経験に基づいて一人一人に最適な治療を組み立てられる。 そういう信頼できる専門家を選ぶことが何よりも大切になります。
ホスト: なるほど。
ゲスト: 耳だけを見るんじゃなくて、なぜ耳に症状が出たのか、その根本原因である体質まで見抜いてくれる場所を探すという視点が必要ですね。
ホスト: 今日は、重度の突発性難聴に対する二つの全く異なるアプローチを深く掘り下げてきました。最先端の再生医療と科学的な診断技術と融合した伝統医療。どちらも、治癒力を引き出すという点で共通していたのが本当に印象的でした。
ゲスト: 標準治療の炎症を抑えるという段階から、もう一歩先の再生を促すという新しい治療の地平線が見えてきたように感じますね。
ホスト: 最後に、この話を聞いているリスナーの皆さんに一つ思考の種を。森上鍼灸整骨院の資料には、もう一つ音響療法というものが紹介されていました。これは、たとえ片耳が完全に失聴してしまっていても、患者さんの聴力に合わせて特別に加工した音楽を聴くことで、脳が音の方向などを正しく認識できるようにリハビリするというものです。このことから考えさせられるのは、私たちはつい耳という器官そのものの再生にばかり注目してしまいますよね。でも、最終的に音を聞いていると認識しているのは、私たちの脳なんです。 「身体的な回復」と「脳の再トレーニング」、この2つを組み合わせることで「聴覚を取り戻す」という体験は一体どこまで可能になるんでしょうか。これもまた、この先に私たちが探求すべき大きなテーマなのかもしれないですね。
※出典1 突発性難聴に対するIGF1治療について 京都大学
※出典2 森上鍼灸整骨院 「治療に対する考え」