ホスト: さて、今回の深掘りですが、テーマは「突発性難聴とめまい」になります。
ゲスト: はい。
ホスト: あの、ある日突然ね、片方の耳が聞こえなくなるだけでも、まあ大変なのに。
ゲスト: ええ。
ホスト: そこにめまいまで加わるとなると、ご本人にとっては本当に深刻な事態ですよね。
ゲスト: そうですね、かなり。はい。
ホスト: あなたからお預かりした臨床経験ですとか、研究論文。突発性難聴の臨床経験40年、延べ14万人の突発性難聴の患者さんを治療してきた森上鍼灸整骨院の経験をもとに作成した資料をもとにですね、この2つの症状の関係性。
ゲスト: ええ。
ホスト: 特にめまいがその聴力の回復とか日々の生活の質、QOLにどう影響するのか、ちょっと一緒に紐解いていきたいと思います。
ゲスト: はい、よろしくお願いします。突発性難聴の方のですね、だいたい3割から4割くらいの方に、ご自身で感じるめまいが伴うとされてるんですね。
ホスト: 3、4割ですか!結構多いですね。
ゲスト: ええ。ただですね、めまい感の訴えがなくてもですね、眼振検査とか、そういうので客観的に調べると、もっと多くの方で、あのーバランスを司る「前庭」っていう部分ですね。
ホスト: ああ、前庭。
ゲスト: ええ。そこの機能に何らかの影響が出てるんじゃないかという可能性も指摘されてますね。
ホスト: なるほど。そのめまいなんですけど、難聴の前後に起こることがあるということですが
ゲスト: はい。
ホスト: その発症するタイミングで何か違いってあるんでしょうか?なぜそのタイミングが重要なんですかね。
ゲスト: これは非常に重要なポイントだと思います。
ホスト: はい。
ゲスト: あのー資料を見てますとね、めまいがまず先に来て、その後に難聴が現れるというケース。これは難聴がより重症化しやすいと。そして、回復も難しい傾向があると。まあおそらくなんですけど、めまいが先に来るということはそのー内耳へのダメージがですね、より広範囲に及んでるそういう可能性を示唆しているのかもしれないですね。
ホスト: 深刻度がちょっと高いかもしれないと?
ゲスト: そういうことですね。逆に難聴がまずあってその後にめまいが出た場合、この場合は比較的回復しやすい予後が良いとされていますね。
ホスト: なるほど症状としてもかなり激しいめまいが多いんですか?
ゲスト: はい、そうなんです。多くはですね、こうぐるぐる目が回るような回転性の激しいめまいですね。で、吐き気を伴って、まあ時にはね、救急車で運ばれる方もいらっしゃるほどです。
ホスト: そんなにですか。
ゲスト: ええ。その後もなんていうか体がこうふわふわ揺れるような、そういう不安定な感じのめまいがですね、長く続いてしまう方もいらっしゃるんですね。
ホスト: ああ、急性期が過ぎてもまだ残る感じなんですね。
ゲスト: そうなんです。これは生活への影響も長引いてしまいますよね。
ホスト: うーん。やはりそのめまいの有無というのは、聴力の回復具合に大きく関わってくるという。
ゲスト: まさにその通りです。あのー複数の研究データをちょっと照らし合わせてみてもですね。めまいを伴う突発性難聴というのは、まず発症時の聴力レベル。
ホスト: はい。
ゲスト: それから治療を経た後の最終的な聴力レベルもやっぱり悪い傾向が明らかになってますね。
ホスト: ああーそうですか。
ゲスト: ええ。特に国の研究班が定めた重症度分類というのがありまして。
ホスト: はい、グレード分けですね。
ゲスト: そうです。それで、発症時の聴力が非常に悪いグレード4であって、かつめまいも伴う場合、これはグレード4Aと分類されるんですが。
ホスト: グレード4A。
ゲスト: この場合は残念ながら聴力の改善がかなり限定的になる可能性が高いということがデータで示されています。
ホスト: うーん、それは厳しいですね。
ゲスト: ええ。ですからまあ、初期の段階でめまいを伴う重度の難聴の場合はですね、回復の見通しについて、ご本人やご家族にもより慎重な説明が必要になるということですね。
ホスト: なるほど。聴力だけじゃなくて、QOL、つまり生活の質への影響はどうでしょうか?気になりますね。
ゲスト: ええ。そうですね。「HHIA」というあの難聴が生活に及ぼす困難さ。これを測る心理評価があるんですが。
ホスト: HHIA、はい。
ゲスト: これを使った調査結果がなかなか興味深くてですね。突発性難聴の方のHHIAスコア。これ平均すると両耳が難聴の方よりは低いんですけれども。
ホスト: うん。
ゲスト: スコアの高さ自体は必ずしも聴力レベルだけで決まるわけではないようなんです。
ホスト: あ、そうなんですか?聴力だけじゃない。
ゲスト: ええ。例えば、何らかの理由でその治療開始が遅れてしまったというケース。
ホスト: はい。
ゲスト: こういう場合だと、たとえ聴力がある程度回復したとしても、このHHIAスコアが高くなる傾向が見られて。
ホスト: へえ~。
ゲスト: これがQOLの低下につながっているんだろうと考えられますね。
ホスト: なるほど、治療開始のタイミングも影響すると。
ゲスト: 大きいと思います。あとですね、聴力がある程度安定した後でも、何らかの症状が残る方がやっぱり少なくないんですね。
ホスト: ああ、後遺症のような?
ゲスト: ええ。ある調査では、治療が終わった後も約半数の方に何聴とか耳鳴りが残ると。
ホスト: 半数ですか!
ゲスト: はい。で、約4分の1の方に耳が詰まった感じ、そして約1割の方にめまいが残っていたという報告があります。
ホスト: 1割はめまいが残るんですね。
ゲスト: そうなんです。特に先ほどのHHIAスコアが高かった方々、この方たちは難聴と耳鳴りの両方を自覚している割合がなんと9割以上と。
ホスト: 9割。
ゲスト: ええ、非常に高くてですね。やっぱり複数の症状が重なることで、QOLへの影響がより大きくなるということが伺えますね。
ホスト: うーん、深刻ですね。では、その辛いめまい自体にはどういうふうに対処していくんでしょうか。
ゲスト: はい、まず急性期の、その激しいめまいに対してはですね、まずは安静です。
ホスト: 安静。
ゲスト: ええ。特に頭を動かさないようにすることが重要ですね。
ホスト: はい。
ゲスト: それと同時にめまいは時間とともに良くなっていくことが多いですよということをしっかりお伝えして。
ホスト: ああ、精神的なケアも。
ゲスト: そうなんです過度な不安を取り除くこの精神的なサポートも非常に重要になります。
ホスト: なるほど。
ゲスト: もちろん吐き気が強い場合は制吐薬、吐き気止めを使います。
ホスト: はい。
ゲスト: それで、眼振ですね。これを注意深く観察しながら状態が落ち着いてくれば、少しずつベッドから起き上がるとか。
ホスト: 徐々に。
ゲスト: ええ。安静の度合いを緩めていきます。多くの場合、まあ数日程度で歩行が可能になるとされていますね。
ホスト: 数日で歩けるようになるんですね。少し安心しますね。
ゲスト: ええ。原因としてはやはり内耳の体のバランスを司る部分。
ホスト: バランス。
ゲスト: ええ。そこの障害が考えられているんですね。具体的に言うと、回転を感じる半規管とか、あるいは直線的な動きとか傾きを感じる耳石器。まあ、これらを合わせて前庭と呼びますけど。
ホスト: 前庭。
ゲスト: はい。そこの器官の障害ですね。
ホスト: やはりそこが原因だと。
ゲスト: そうですね。実際にバランス機能を調べるいろんな精密検査、例えば温度刺激による眼振反応検査とか。
ホスト: はい。
ゲスト: こういったもので異常が見つかることが多くてですね。資料によっては、もう7割以上で何らかの異常が検出されたなんていう報告もあります。
ホスト: 7割以上ですか。
ゲスト: ええ。で、特に一部の方ではその温度刺激に対する反応が低下したままになってしまう所見、これCPと呼ばれるんですが、これが残ってしまうと例えば暗い場所でのふらつきといった形で後々まで影響することがあるのでちょっと注意が必要になることもありますね。
ホスト: なるほど、よくわかりました。突発性難聴におけるめまいというのは単に、ついでに起こる症状というわけではなくて、聴力の回復予測とか、長期的なQOLにまあ深く関わる重要なサインなんだと。
ゲスト: そうですね。
ホスト: そして急性期の適切な管理と、まあ心理的なケア、これが非常に大切だということですね。
ゲスト: はい、まさしくその通りだと思います。急性期の対応はもちろん重要なんですが、症状がある程度固定した後のですね、残ってしまった難聴とか、耳鳴り。そして平衡機能の問題と、まあどう向き合っていくか。
ホスト: ええ。
ゲスト: そういう長期的な視点でのフォローアップがやはり重要になってきますね。
ホスト: はい、ありがとうございます。最後にですね、リスナーのあなたへ思考の種を一つ投げかけさせてください。今回の資料の中にはですね、ご本人がめまいをはっきりと自覚していなくても検査をしてみると前庭機能に異常が見られるそういうケースも少なくないと示唆されていました。
ゲスト: ええ、ありましたね。
ホスト: これって、もしかしたら突発性難聴という病態が聴覚だけじゃなくて、私たちが普段意識している以上に身体の平衡感覚システム全体にもっと静かに、そして広範囲に影響を及ぼしている。そういう可能性を示唆しているのかもしれないなと。
ゲスト: なるほど、深いですね。
ホスト: ええ。この深掘りがあなたの知識を深める一つとなれば幸いです。
※出典1 全日本病院出版会 ENTONI No.52 「突発性難聴」
※出典2 森上鍼灸整骨院 突発性難聴によるめまいの鍼治療